蒼穹の昴(3) (講談社文庫)

蒼穹の昴(3) (講談社文庫)

パブリッシャー
講談社
価格: ¥660

蒼穹の昴(3) (講談社文庫)のレビュー

清朝末期と日本の幕末には共通の壮大なドラマがある
地主の次男、梁文秀(史了)とその地の貧民の子、李春雲(春児)。
科挙登第を経て国政を担うこととなる史了と、宦官という
方法で内廷のトップまで上り詰めた春児。
二人の男(!?)を通して、清代末期西太后が実権を握っていた
王朝内部の動乱とそれにかかわる人々の思惑を描いた
壮大な歴史小説。

読み進めていく中で感じたのは、日本の幕末との
共通性。もちろん、時間的共通性もあるんだけど、
欧米列強のプレッシャーを受けながら、従来の
権威をいかに保つかという苦心と、国を存続させるためには
改革を進めなければという維新の思いとのせめぎ合い。
違いは、日本が明治維新という中からの改革で国体変化を
成し遂げたということと、日本が列強の側に加わってきたと
いうことか。やっぱり中国は大きな国過ぎて、紫禁城の
中にいては危機感が伝わってこないのか。

現代の中国も変革が必要な時期に来ていると思うけど、
そこはやっぱり歴史を学んで、中から変わっていって
もらわないと。「党」という「王朝」も絶対ではないのだから。

結局、4月の北京旅行前に読むことは出来ず、旅行の
帰りから読み始めたこの本。途中で出てくる地名だとか、
建物の名前は、実際行ったことで具体的にイメージしながら
読めました。そういった意味では、行ってから読んで
よかったのかなと思いますが、読み進めるにしたがって、
あっ、ここも行ってみたかったななんて思うところも
また出てきたりして。
なので、来月の休みのときにまた北京に行ってみようかと
思ってみたりもして。

李鴻章の香港の交渉が秀逸
袁世凱の暗殺失敗、李鴻章の香港の交渉など、内に外にストーリーが展開するところが面白いですね。
愛が深い故の悲劇
本巻で、これまで清朝を支え続けた恭親王と李将軍が表舞台から退場し、紫禁城では西太后派と皇帝派の争いがもはや止める事が出来なくなってしまいます。

前巻でもそうでしたが、この巻でも全般的に示されているのが、皇帝に対する西太后の限りない愛。本来ならば、天命を失った清の幕引きを降ろす役割を担うのは、皇帝の役割のはずなのに、「あの優しい子にそのようなむごい仕打ちをさせられようか」と、自らが非難の的になることを省みず、その役割を代わりに果たそうとする西太后。

直接の親子でもないのにも拘らず、いやそれだからこそ、西太后と皇帝の情愛の深さには感動しますし、その一方で、彼等の周りにいる延臣達の殆どが、2人の気持ちを理解することなく、逆に二人を苦しめるように事態を悪化させていく有様に暗然とした思いを受けます。

あと、改革派の旗手として現れた康有為ですが、史実でもああいう性格だったらしく、インタビューした日本の新聞記者が「ああいう人間だから、事を成せなかったのだ」と、あきれ返ったという逸話を残しています。
李鴻章が八面六臂の大活躍
いよいよ第三巻ですが、この巻では清朝が欧米列強に蹂躙され、
翻弄される様子が描かれます。
そこで、李鴻章なのですが、第三巻の見所はやはり李鴻章の政治手腕
ではないでしょうか?
特に香港の割譲に関しては、英国への「割譲」ではなく「貸与」と
した英国側との交渉の場面が、たいへん凛々しく描かれます。
99年後(この辺の数字の意味については小説を是非読んでください)
英国によって繁栄した香港が中国に返還される。
まさに敵国に富ませた香港が99年後に中国に返還され、その富を
そっくり貰い受けるという戦略。すごいではありませんか…。
皆から慕われ、星の力を借りずに出世する主人公
 清朝末期時代を描いた歴史小説の第3巻。
 第11代光緒帝が即位しても西太后は政治の実権を手放しません。西太后に引退を迫る「変法」勢力と、西太后が引退すると失脚してしまう守旧派が勢力争いを展開していますが、その間に、列強諸国による中国の植民地化が一段と進みます。英国から香港の割譲を迫られた清朝廷は、李鴻章を全権大使に任命し、なんとか「99年租借」で決着をつけました。
 主人公の文秀は「変法」勢力の中心人物となり、もうひとりの主人公の春児は西太后の側近の宦官として、敵対する政治勢力に身を置くことになります。

 宦官となった春児には、もう守るべき家族がありません。寂しさを埋め合わせるように孤児院を経済的に支援したり同僚の借金返済に力を貸したりしますが、次第に皆から慕われるようになりました。
 老いた宦官から「神様ってのは、こういうもんだ」と抱きしめられ、イエズス会の司教から「春児は、主イエスの現し身です。デウスがこの貧しい国の民のためにお遣わしになった、天の使徒ですよ」と賛嘆されます。
 第2巻で昴の宿星など無かったことが明かされた春児でしたが、星の力を借りずに宦官の頂点に登りつめる日がいよいよやってきました。

 文秀と同じ年に科挙の試験に合格した二人の友人にも、重要な役回りが回ってきます。
 一人は光緒帝の伯父が死ぬときに「西太后を殺せ」という命令を受けました。
 もう一人は、乾隆帝の霊から「真の龍玉を守護せよ」という使命を与えられます。

 いよいよ第4巻は清朝末期の動乱に突入します。
 この物語の壮大な伏線である「真の龍玉」とは何なのか、主人公たちがどのような運命をたどるのか。

 あー、早く第4巻が読みたい!